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国が貧しくなると言うこと(記事No.7)

 最近、日本が貧しくなったとの話を耳にすることが増えた。実際、1人あたりの国民総生産は購買力平価で1990年の世界21位から、2020年には世界30位と低下している。それでも、世界の国々の中では日本はまだ恵まれた国ではあると思うが、少なくとも先進国と称される国々の中では貧困化が最も進んでいる国に入るであろう。特に母子家庭の状況が厳しいことを反映してか、2020年時点で、全国で5,000箇所以上の子ども食堂が存在している。

日本の貧困化の原因は、大きく分けて2つあると思う。第一に、経済成長が久しく止まっていることである。パイが大きくなっていないのだ。第二に、富の分配が正しく行われていないことがある。パイのピースの大きさに極端な差があるのだ。税制上の問題も、富の再分配の問題として、第二の要因に含めても良いだろう。これらの要因は、いずれも巨大災害など自然的な現象の結果では無く、政策など人為的な行為の結果として生じたものである。

このような日本の現状に対する評価は、寄って立つ思想や哲学により大きく異なる。いわゆる新自由主義的な思想を有する人々にとっては、小泉構造改革以来の約20年で、日本は随分と仕事がしやすく儲けやすい環境になったと考えているかも知れない。いや、構造改革がまだまだ足りないと考えてもいるだろう。一方、社会主義的な思想を有する人にとっては、貧富の格差が拡大している最悪の状況が続いていると捉えるだろう。

どのような思想的立場を取るにせよ、目を向けるべきは、制度や統計的数値だけではない。現にこの日本で生活を営んでいる国民の状況がどうであるのか、政治家だけでなく、学者やジャーナリストなど、社会を常に観察する職業人が有していなければならない視点である。この視点を欠く政治家や各種専門家は、皆偽物と断じても良いだろう。

「衣食足りて礼節を知る」と言う諺がある。イエスも、その教えを聞きに来た大群衆がお腹を空かせている様子を見て気の毒に思われ、超自然的な方法で彼らに十分な食物を与えられた。これは、5つのパンと2匹の魚の奇蹟として、4福音書全てに記録されている。仙人ならいざ知らず、普通は最低限の食事もままならい状況では、自分が生き延びるだけで精一杯である。中には、短絡的に犯罪に走ったり、自暴自棄となり暴発する人もいる。自殺する人もいるだろう。

国が貧しくなると言うことは、人々の生活が苦しくなると言うことであり、犯罪や自殺など様々な社会問題が深刻化することである。物質的な充足は幸福な人生を保証するものではなく、精神的な充足が不可欠ではある。しかし、最低限の生活までも維持することが困難であったなら、どうして精神的に充足出来るのか。国民の精神的幸福のためにも、国がこれ以上貧しくなることは押し止めなければならないと思う。そのためにも、神を信じる人々は、より一層天的な知恵を求める必要がある。