パンデミックの陰に隠れて大きく注目はされていないかも知れないが、食料価格が高騰している。国連食糧農業機関の発表によると、今年6月までの1年間で、約40パーセントの価格上昇であり、特に小麦、大豆、とうもろこし等の穀物価格の上昇が著しい。日本人にとっては幸いなことに、今のところ米の価格は安定的に推移している。しかしながら、穀物価格の急騰は、小麦製品や食肉など広範囲に価格上昇をもたらすことから、今後は日本でも、食品価格が隠れ値上げではカバーできないほど上昇するだろう。
食料は投機の対象となる商品でもある。どこかの国の庶民が食糧不足で苦しんでいたとしても、価格の高騰で莫大な利益を得る者たちにとってはどうでもよいことであろう。また、食料は石油や半導体などと同じく、戦略物資でもある。それゆえ、各国は食料安全保障の観点から、価格について政府がコントロールできる余地を残している。需給バランスが適正な範囲に保たれていれば価格は安定するが、それが崩れると大きく上下に振れることがある。そうなると、政府の介入によっても、輸入依存度が高い国ほど十分な食料が確保できない事態ともなる。まして、中国のような領土紛争の相手国に食料供給を依存することは、安全保障上極めて危険である。
聖書には、終わりの時代が近づくと、食料価格が暴騰し、また、飢饉が起こることが預言されている。それらの預言に照らせば、現在進行中の食料価格高騰は、まだ序の口であろう。ヨハネの黙示録には、小麦1マスで1デナリという記述がある。これは、大まかな計算ではあるが、米換算で10キロでは15万円前後となる。もしそうなれば、大半の日本人は薄いお粥をすするしかなさそうだ。食料自給率がカロリーベースで37パーセント程度でしかない日本は、将来的に食料不足に陥る可能性がある。ただでさえ、食料品にも8パーセントの消費税を課している上に価格高騰では、国民の生活はますます苦しくなる。中央の政治家や官僚は、自分たちさえ食べていければよいとでも思っているのではとの疑問がわく。
ロシアでは、ソ連崩壊後に食料不足が起きた時、多くの人々はダーチャと呼ばれる近郊にある別荘の家庭菜園で野菜などを栽培し、困難な時期を乗り切ることができた。その点、日本はどうなるのか?都会の人々の中には田舎を見下す人もいるが、食料の供給を担っているのは田舎である。敗戦後の食料不足の時期には、都会から多くの人々が農村部に買い出しに行き、現金だけでなく着物や宝石などとの物々交換で食料を手に入れた。一説によれば、その時足元を見られた都会人の恨みが、後に地方冷遇の政策に結び付いたとのことだが、それはどうであろうか。近年では、農村部の生産者と都市部の消費者が直接取引を行う方法もあり、このような動きは歓迎すべきことだろう。
日本では、地震や台風に備えて各家庭で食料や水を備蓄する習慣があるので、1週間分程度の備蓄をしている人が大半であろう。都市部の住宅事情では、1年分の備蓄は難しいかも知れず、せめて1ヶ月分程度の備蓄を心がけるのが現実的なところか。アメリカには、数百万人のプレッパーズと呼ばれる、核戦争も見据えて実際的な備えをする人々がいるが、日本では、個人レベルでそこまで徹底した準備はできないであろう。私たちとしては、自分たちでできる備えをしながら、全能の神に信頼を置いて、その守りを受けることが最も確実なサバイバル法であろう。
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