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日本だけが貧しくなるのは何故か(記事No.74)

 東京新聞の2021年12月15日朝刊1面トップに、「借家追われる危機急増』と言う見出しで、自治体が生活困窮者に対して家賃を補助する、「住宅確保給付金」の支給件数が、昨年比で約34倍に激増したとの記事が掲載されていた。コロナ禍対策で、休業などによる減収の場合にも適用出来るようにした、利用条件緩和の影響もあるとのことだが、経済的に追い詰められている人々が増加していることは確かであろう。

 昨今の新自由主義的な考え方の蔓延で、勘違いしている人々も多いのかも知れないが、そもそも住居の確保は国民の権利である。具体的には、日本国憲法第25条に、「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」との明文規定がある。すなわち、政府は、最も基本的な性能を有する公営住宅を、国民のために十分に供給する責任を有している。現在の公営住宅の多くが、低所得者層向けと言う、言外にいささかの侮蔑の意味を含んだカテゴリーとして整備されていることは、憲法の精神からも問題があり、これまでの住宅政策の誤りを現しているようにも思える。このように、住宅政策に関わる現況にも、日本が単に精神的にだけでなく、実際的にも貧しいことが現れている。

 最近は、この現実を認識している人が増えたが、先進国と言われている諸国の中で、何故か日本だけが貧しくなって来ている現実がある。過去30年間の経済成長率は、日本は先進国で最低レベルである。1990年から2020年までの30年間で、国内総生産(GDP)の変化は、アメリカが3.5倍、ドイツが2.3倍に対して、日本は1.5倍である。平均賃金の伸び率も最低レベルであり、30年間で日本は4.4パーセントの増加であるのに対して、アメリカは47.7パーセント、ドイツは33.7パーセントの増加率である。俗に、失われた30年と言われる所以である。日本経済新聞2021年12月16日付記事によれば、このままでは、日本の1人あたりGDPは、2027年には韓国に、2028年には台湾を下回る見込みとの予測である。

 こうなった原因は、様々な説があるが、故意であれ過誤であれ、政策の失敗が最大の要因であろう。国家指導者らが愚かだったと言うことである。もちろん政治家たちだけでなく、中央省庁の官僚たちにも大きな責任がある。政治家の陰に隠れて、国民にとって不利益をもたらす政策を進めて来たのが彼らである。財務省がしれっと発表した統計によれば、2021年の国民所得に対する税金と社会保険料の負担割合を示す国民負担率は、何と44.3パーセントに達するとの見通しである。彼らが言う将来の負担とされる、財政赤字を加えた潜在的国民負担率は56.5パーセントとなるそうである。既に五公五民並の負担率であるから、封建時代に等しい搾取である。百姓は生かさず殺さずの思想は、現代の政治家や官僚に、しっかりと受け継がれていると言えよう。

「指導者に英知が欠けると搾取が増す。奪うことを憎む人は長寿を得る」(箴言 28:16 新共同訳)


 私が思うに、日本人は、政府からだけでなく、各種業界の利権構造からも、長年搾取され続けている。中所得者層(先進諸国の国際的感覚では、年収4,000〜5,000万円程度以下の層か)までの人々、すなわち、私たち、俗に言う99パーセントの人々は、住宅、教育、医療・介護の3大出費要因により、経済的余裕の乏しい生活を強いられている。これらの各分野における公費の投入を増やし、同時に過剰な出費を強いるような仕組みを改める必要がある。住宅分野では、先ほど公営住宅の供給において質・量共に問題があることを指摘した通りである。教育分野においては、公立小中学校の教育レベルが低いことと、生徒に異常な負担を強いる受験システムのため、塾に通う必要があったり、私立学校に行けば高額な授業料を払うことになるなど、とりわけ子供が複数いれば教育費負担が重くのしかかる。医療分野では、医学が進歩すれば病人が減って医療費も減るのが正しいはずであるが、実際は逆で、病人は減らず、医療費は膨張を続け、介護費用と併せて国民生活を圧迫している。以上の全ては、政官財などの利権構造を徹底的に改めることによって、大きく国民負担を減らすことが可能であり、出来ないのではなく、やらないだけである。

 解決策としては、本ブログでもこれまで書いて来たが、国家指導者が神を畏れ、民を愛する者となる必要がある。そのような人は、国民から搾取するような政策は拒否し、国民を豊かにするような政策を進めるだろう。以前、政治の表舞台に、「悪夢の民主党政権」とよく口にする人がいたが、失われた30年間の中で、民主党政権が国政を担っていたのは3年余りに過ぎない。彼らにも責任があるのは確かであるが、より大きな責任を負っているのは誰であるか、一目瞭然である。多くの日本人が苦しい生活から脱却し、この国がもっと暮らしやすい国となるためには、責任を負っている者たちが心を入れ替えるか、さもなくば、表舞台から(裏舞台からも)退場するかが必要であろう。正しい心を持つリーダーたちが、この国の各分野に起こされることを祈りたい。