さて、海外に目を向けると、イギリスで現地時間10月15日昼ごろ、エセックス州リーオンシーの教会で開かれた、有権者との対話集会に参加していた下院議員のデービッド・エイメス氏(69)が、25歳の男に刃物で複数回刺され死亡する事件が発生した。ロンドン警視庁の発表では、犯人は単独犯で、イスラム過激主義と関連している疑いがあるとのことだ。また、地元紙は、犯人をソマリア系と報じている。殺害されたエイメス議員は、保守派で、ブレグジット(EU離脱)推進派だったと言う。事件の背景に関する警察の迅速な発表に、何か不自然さを感じ少し調べてみた。イギリスの独立系インターネット・ニュース・サイトなどの報じるところでは、エイメス議員は、ワクチン・パスポートの導入に強く反対していたという。
こうなると、犯人が本当にイスラム過激主義に影響されて殺害を実行したのか、疑問が生じる。イギリス国会では、まもなく、エイメス議員の主導で、ワクチン・パスポートに関する緊急討議が行われることになっていたと言う。その国会討議の直前に、ワクチン・パスポート導入反対の中心的議員が刺殺されたことが、果たして偶然であろうか?私は、この事件に既視感にも似た、日本で起こったある事件との相似形を感じざるを得ない。それは、2002年10月25日に発生した、石井紘基衆議院議員(当時61)の殺害事件である。民主党(当時)議員であった石井氏は、その日、国会に向かうために東京都世田谷区の自宅から出たところ、待ち伏せていた自称右翼団体代表の伊藤白水に刺殺されたのである。
殺害犯の伊藤は、警察の取り調べに対して、石井議員に借金を申し入れたが拒否されたことで恨みを晴らすために殺したと供述した。裁判では金銭トラブルという動機は信用できないとされたが、真の動機が解明されることは無く、無期懲役の判決が確定した。ところが伊藤は、刑務所で彼と面会したテレビ朝日記者の質問に答えて、裁判での証言は出鱈目であり、実はある人物から頼まれてやったのだと告白したのだと言う。彼は結局、頼んだ人物の名を明かすことは無く、その後は記者との面会にも応じていないので、真相はなお藪の中である。しかし、殺害事件現場からは、石井議員が国会に提出する予定だった、鞄に入れてあった質問書類が手帳と共に紛失しており、その後も発見されていない。
それでは、石井議員は何を質問しようとしていたのか?彼が、政界を震撼させるだろうと語っていたと言われる、その内容は何であったのか?石井議員は、1993年に日本新党から衆議院議員選挙に立候補し初当選して以来、政府支出の無駄遣いや政府機関の不正を徹底的に調査していた。そして、一般会計を遥かに上回る特別会計の闇を追求していた。ちなみに、石井議員が暗殺された2002年当時の一般会計予算は約83兆円であったが、同議員は、重複を除いた国家予算の総額は約200兆円あるのではないかと国会で指摘している。つまり、一般会計以外に毎年百数十兆円規模の公金が、国会の審議を経ることなく支出されていたのである。当然それらは、各省庁の官僚機構のコントロール下にあり、天下りや関連業界との癒着を生む温床ともなっていたことは想像に難くない。
石井議員が暗殺された当時は、小泉純一郎氏が首相を務めていたが、小泉政権の期間中、政治的不正を調査していた新聞記者などが何人か不審な死を遂げている。前記の伊藤受刑者の告白でも頼まれたとされているように、それらも政治的暗殺であった可能性がある。指令者は、一部の与党政治家か高級官僚の周辺にいる、秘密工作を担当する者たちかも知れない。暴力団の中には、鉄砲玉レベルではない暗殺要員を抱えている組織もあると言われているが、あるいは、実行犯は彼らの可能性もあるだろう。また、ある種の半島系新興宗教団体の中には、別の事件で海外から暗殺者を招き入れた疑いが持たれる組織もあることから、親密な与党政治家の意を受けて動いた可能性も捨て切れない。そのあたりの話となると、推測の域を出ないことから、この辺にしておく。
いずれにせよ、政治的暗殺は映画や小説の世界だけの話ではなく、今日においても、民主主義国家とされている諸国の中でも、現実に起こっている可能性が高い。ある人物が暗殺された時、それによって誰が最も利益を受けるのかを考えれば、おおよその背景は推測がつくであろう。しばしばそれは、一個人や一組織ではなく、政権や国際的な利権集団の可能性がある。ケネディ暗殺事件が今までそうであったように、私たちの前には真実が明らかになることは無いのかも知れない。暗殺者の影にいる者たちは、隠し通せると考えているのだろう。しかし、全知全能の神は知っておられる。そして、例え人の思いでは裁きが遅いように感じられていたとしても、必ず悪を滅ぼされる。権力者であっても、巨万の富を有する者であっても、誰も神の裁きを逃れることは出来ない。いつの日か必ず、私の尊敬している数少ない日本人政治家の1人である、石井紘基氏の無念も晴らされるであろう。
「神は偽る者を知っておられる。悪を見て、放置されることはない」(ヨブ記 11:11 新共同訳)