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分断して統治せよ(記事No.58)

 衆議院選挙が公示され、各地で政党や候補者による選挙運動が繰り広げられている。いつの頃からか、日本では、選挙公約は破られることが普通になってしまい、マスコミはもちろんのこと、有権者も公約不履行に対してあまり厳しい目を向けなくなってしまった。であるから、選挙公約の実質とは、政党が真面目に実現を図るべき、国民との約束ではなく、単なる政治的スローガンのようなものであろう。そうは言っても、各政党の公約には、日本をどこへ導こうとしているのか、そのメッセージを読み取ることは出来る。

 今総選挙の公約の中で、特に気になる点は、ワクチン・パスポート(接種証明書)の導入に関する政策である。政党レベルでは、国政政党の中では、ワクチン・パスポートの導入を図ると明確に打ち出しているのは、自由民主党だけである。その他の政党は、仮に導入に前向きであったとしても、選挙公約化はしていない。なぜ私が、ワクチン・パスポートの導入公約に着目しているのか。それは、導入されれば、国民の自由を束縛すると同時に、ワクチン接種の有無によって、国民の間に分断が生じるからである。

 かねてから書いているように、ワクチン・パスポートは、国民の健康を守るためのものではなく、国民の管理を強化するための方策であると受け止めて良いだろう。新型コロナ・ワクチンは、現在治験中のワクチンであり、その有効性や安全性は、接種を進めながら確認されるであろうものだ。また、接種の結果健康被害が生じたとしても、ワクチンを供給する製薬会社は、免責される契約であると言われている。ワクチン・パスポートを既に導入している国々で、未接種者がどのように社会活動を制約されているか、その実態は、意図的な差別であり、類別であると言える。

 昨年から続くパンデミックと世界的なワクチン接種推進は、明らかに各国で国民間の分断をもたらしている。各国政府が、国民の間に分断を生じさせる意図は無かったと考えることは、あまりに無邪気であろう。なぜなら、分断を生じさせないような政策は採られなかったからである。日本においても、今後ワクチン・パスポートが導入されたならば、接種者と未接種者の間で分断が生じることになるのは確実である。既に、職場内や学校内で、あるいは時には家庭内でさえも、ワクチン接種が正しく、非接種は誤りであるといった、非科学的かつ差別的な考え方と、分断が生じているところがあるだろう。

 収容所国家に堕してしまったオーストラリアなど、いつくかの国々では、ワクチン接種をしない人は、公衆衛生上の脅威と見做していると言う。しかし、感染症を予防するために、ワクチン接種ではなく、自然免疫力を高める努力をすることを選択した人々が、なぜ社会の脅威になるのか、そこには何らの科学的根拠は無い。あるのは、ワクチン接種が最も有効で不可欠な感染症対策であると、あらかじめ結論付けた各国政府や一部の研究機関及び報道機関による、都合よく提示された数字やパフォーマンスだけである。

 このように、国民の間に分断をもたらしている元凶は、(共産主義国などを除き)民主的に選ばれているはずの政府であることが分かる。これは、異常ではあるが、特別なことでは無い。古今東西で、独裁的な性質を有する為政者が行なって来たことである。「分断して統治せよ」あるいは、「分割して統治せよ」と言う言葉を、聞かれたことがあるかも知れない。この言葉は、古代ローマ帝国で既に存在していたと聞く。しかし、最もそれを有名にしたのは、世界中に植民地を有していた、かつての大英帝国であるだろう。彼らの植民地統治の基本は、被支配民らの中で、民族的、宗教的に少数派を社会の要職に登用し、多数派を支配させるという、間接統治の手法であった。

 少数派に支配された多数派は、当然のことながら、自分たちを直接支配する者たちに憎悪や嫌悪の念を抱く。本来は、彼らの共通の敵は、植民地統治の大本の宗主国であるにも関わらず、被支配民同士で敵対することで、大英帝国は安泰となると言う仕組みであった。これと同じ統治手法は、歴史を見れば、多くの国々で行われていたことである。そして、現在進行形で、世界の多くの国々で行われていることでもある。もし、私たちが歴史の教訓に学ぶのであれば、国民の間に分断を生じさせるのが確実な政策は、断固拒否するべきであろう。私たちは、たかがワクチン程度のことで、互いに裁き合ったり、反目し合ったりすべきではない。国民にとって重要な課題は、他にも山積しているのだ。

 いくつかの国々の統治者たち、特に世界統一国家の実現を願う者たちは、国民が彼らの推し進める政策に疑問を持たず、ただ羊のように黙々と従うことを求めている。疑問を持つ者や従わない者は、社会から排除し、そのことを他の人々が疑問に思わないように仕向ける。ワクチン・パスポートは、そのための効果的な手段となっている。現時点で、英国がワクチン・パスポート導入を一旦見送り、北欧諸国も導入しないことを決めた。また、米国でも、これまでに導入を決めたのは、ニューヨーク、カリフォルニア、ハワイの3州だけである。既に導入されているフランス、イタリア、カナダ、オーストラリアなどでは、激しい反対運動が継続中である。世界中で、決して少なく無い人々が、ワクチン・パスポートに隠された意図を見抜いていることには、一筋の光明が見出せるであろう。このような世界を生き抜くためには、神からの賢明さと、神に対する素直さが共に必要である。

「私があなたがたを遣わすのは、狼の中に羊を送り込むようなものである。だから、あなたがたは蛇のように賢く、鳩のように無垢でありなさい」(マタイによる福音書 10:16 聖書協会共同訳)