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消えた11兆円(記事No.108)

 ゴールデンウィークも今日が最終日であり、明日からまた、普段通りの生活が始まる人が多いと思う。今年は、飛び石を含めて10日間であったが、この間も様々なニュースが報道された。大きく取り上げられたものとしては、国内関係では、知床半島沖遊覧船沈没事故と、それに次いで、山梨県道志村での女児行方不明事件と人骨の発見に関するニュースであった。海外関係では、断トツで、ウクライナにおける戦争に関するニュースであったことは言うまでもない。そのような中、あるニュースについての後追いや深掘りがほとんどなかったのが気になった。

 気になったそのニュースとは、日本経済新聞が2022年4月23日朝刊1面で報道した、新型コロナ予備費約12兆円の内9割の使途追えずというものであった。これまで国会に報告された、約12兆3,000億円の同予備費の内、使途が特定可能なのは約8,000億円のみであり、残り約11兆5,000億円については、使途不明であると言う。国の予算支出であるから、何かしらに使われているはずであるが、納税者である国民はそれを知ることができないと言うことだ。一応は民主国家である日本で、白昼堂々こんなふざけた話が罷り通って良いはずが無い。本来ならば、日経新聞だけでなく、新聞、テレビ、ラジオ、インターネットメディアなど、マスコミ総動員で連日取り上げるべきテーマであろう。あるいは、日経新聞の飛ばし記事だったのか?

 遊覧船の沈没事故や女児行方不明事件は、命に関わる事案であり、犠牲者の遺族や行方不明者の家族にとっては、人生を左右する重大問題であるが、国民全体に関わるスケールの問題とは次元を異にする。それなのに、片や微に入り細に入り報道されているが、もう一方は、なるべくなら報道したくないような取り扱い方である。なぜ、そうなるのかは、官民癒着構造を含めて、独自に追求しようとしている人々もいるので、ここでは深くは立ち入らない。しかし、日本という国は、国も地方も、公金を政官業などの利権集団が貪り尽くす構造が確立されていることは、今回の消えた11兆円の事案でも明らかであろう。

「あなたのつかさたちはそむいて、盗びとの仲間となり、みな、まいないを好み、贈り物を追い求め、みなしごを正しく守らず、寡婦の訴えは彼らに届かない」(イザヤ書1:23 口語訳)


 ゴールデンウィーク期間中に報道されたニュースで、気になった1つがあった。京都新聞が2022年5月7日朝刊1面に掲載した、「京都5私大学生仕送り752円/日」というニュースである。京都私立大学教職員組合が集計したアンケートは、同志社、立命館、龍谷、京都先端科学、京都橘の各大学に在籍する学生の、保護者7,276人から回答を得たものである。それら5大学に2021年度に入学した下宿生は、家賃を除くと、平均で1日当たり752円の仕送りで生活をやり繰りしていると言う。仮に、1人年間100万円の給付型公的奨学金を100万人の学生に支給するとしたら、年間合計1兆円である。今般明らかになった使途不明の国家予算は、その11倍以上である。それだけの公金が、新型コロナ(対策)で苦境に陥った国民を救うために正しく使われていたら、どれほど多くの人々が助けられたことだろう。やはり、日本は滅ぶのだろうかと思わざるを得なかった、最近の2つのニュースであった。