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5年ぶりの再会(記事No.117)

 先週、都内で5年ぶりに、クリスチャンの友人夫妻と彼らのお嬢さんと再会した。友人夫妻は、日本に帰化した中国人であるが、7、8年前に、事業を立ち上げるために中国に一旦戻っていた。最後に会ったのは、2017年3月に子供たちを連れて訪れた、上海でのことである。今回は、ご主人のビザ更新もあり、何年かぶりに一時帰国した機会に会うことになり、私たち夫婦と次男で出向いたのである。友人夫妻の子供たちは既に就職しており、それぞれ別々に住んでいるが、今回はお嬢さんが一緒であった。

 私たち夫婦が彼らに出会ったのは、今を遡ること20年以上前、東京都内の教会に通っていた時のことである。その教会は、礼拝は英語の同時通訳付きで行われており、ビジネスマンや留学生、外交官などの、多国籍の外国人も集っていた。友人夫妻の母語は中国語であるが、留学生出身で日本語が堪能なことで、礼拝説教を聞くことや、日本人の教会員とのコミュニケーションを取ることには不自由なかった。私たちは、お互い気が合い、年齢も数歳違いと近いこともあり、出会って数ヶ月くらいで友人同士となった。その10年後くらいに、私たちは都下での教会開拓のため独立し、彼らも中国に渡ったので、1、2年に1回くらい日本か中国で会う様な繋がりとなった。

 現在彼らは、中国でそれぞれ別々の分野で事業を展開している。新型コロナ流行が始まって以降は、特にご主人の方は、リモート・ミーティングなども多用し、今では中国各地に顧客を有している。奥様の方は、今は講演活動に力を入れているところである。彼らの尊敬すべき点は多々あるが、何といっても、その人柄と、クリスチャンとして信仰深いことが素晴らしい。時々、信仰熱心な人の中には、ある種浮世離れしているかのような人もいるが、彼らは、それぞれの仕事にも熱心で、かつ実を結んでいるのである。また、彼らの二人の子供たちも優秀であり、それぞれ、外資系IT企業で働いている。

 彼らは、一見、絵に描いたような立派な家族であるが、もちろん最初からそうだった訳ではない。ご主人の方は、日本留学中に母国で天安門事件が発生したが、中国政府に対する抗議活動に参加したため、帰国すると身に危険が及ぶ可能性が生じ、卒業後は日本に留まり就職した。その後、日本に帰化している。奥様の方も、中国の高名な一族の出身であるにもかかわらず、ご主人と共に日本国籍を取得している。私たちが彼らと出会った当時、彼らの長女が小学生、長男は2歳くらいであった。特に、長男の方は愛くるしく、教会の中でアイドル的な存在であった。だが、彼らは、それぞれ中学生になった頃から、中国系ということで、愛や知性に欠如したクラスメートらから、からかわれるなどの嫌がらせを受けるようになった。そのため、どちらも、両親の母語である中国語を学ぶことを拒絶し、中国系日本人であることに、負い目を感じるようになった。

 その頃、友人夫妻は、それぞれ転職を重ねた後、相次いで独立し、最初に会社を設立した奥様は貿易を、ご主人の方は、少し遅れてコンサルティング会社を設立した。だが、ご主人の会社は、やがて経営困難となり、休業することになった。一時は、奥様の方は、離婚も真剣に考えたそうである。その当時、第2次安倍政権で、いわゆる有事法制が成立したが、高校に入学した彼らの長男は、これに危機感を持った。彼は、もし将来徴兵制が導入されれば、中国系である自分は、危険な場所に配置されるのではないかと考えたのだ。外国系であると言うだけで差別する、心の狭い人々が少なくない日本であるから、彼の抱いた危機感も当然のことであったと思う。彼は迅速に行動し、高校を中退して、カナダに渡り、現地の高校に編入した。そこで彼は、中国人を含めた様々な国の出身者たちと出会い、人として大きく成長することになった。カナダの大学に進学後彼は、中国のトップクラスの大学の奨学留学生試験に合格し、卒業後は日本に戻り、台湾系IT企業の日本法人に就職した。今では、母語の日本語のほか、英語、中国語に堪能な国際人材として活躍している。

 彼らの長女の方も、決して順風満帆な人生を送って来た訳ではない。小さい頃から俊敏で、中学に入ってからは運動部でも活躍していた彼女は、高校3年生の時、脳腫瘍になり、命の危機に瀕する試練に会った。しかし、両親の必死の祈りに神は応えてくださり、彼女は癒され、無事大学に進学することが出来た。大学生となってから、病気が再発したのだが、その過程で彼女の信仰も練られ、再び神の癒しが現された。以後、現在に至る迄病気の再発はせず、健康が守られている。高校生の頃までは嫌っていた中国語の勉強も、中国の大学に1年間留学するなど、自ら進んで取り組むようになった。現在は、外資系IT会社で働いている。

 友人家族の歩んで来た道を見ると、どのような時でも、例え人の考えでは最悪の状況においても、常に神の守りがあったことを思わされる。現在も、奥様の方は、闘病中のなのだが、今回の帰国前に入院した中国の病院では、入院患者や病院職員らに対して積極的にイエスを証しし、何人かが信仰を持つに至ったと言う。このため、共産党からの叱責を恐れた病院幹部の思惑があってか、予定より早く退院するよう懇願されてしまったと言う。以前から伝道熱心であったが、子供たちの反抗、ご主人の事業の挫折、自身の病気など、数々の試練を通り抜け、多くの涙を流して来たであろうが、その年月の中で、神の恵みを多く体験したことで、その証はより力強いものとなった。

 5年ぶりに彼らと会った翌日、ご主人から私にメッセージが送られて来た。そこには、「神様の豊かな愛が、どのくらいの時間会わなくとも、どのくらいの距離が離れていたとしても、私たちの心と愛を繋いでいると思います。」と書かれていた。彼らは、キリストに在る兄弟姉妹であり、私たち夫婦の大切な親友である。彼らと知り合わせてくださった神に感謝し、私たちも、彼らの愛と熱心な信仰に倣う者となりたいと願う。

「友の振りをする友もあり 兄弟よりも愛し、親密になる人もある」(箴言 18:24 新共同訳)