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天使か妖怪か(記事No.90)

 2022年2月15日付の東京新聞に、妖怪にまつわる面白い記事が掲載されていた。「ゲゲゲの鬼太郎」などの妖怪漫画を世に出した、故水木しげる氏の体験談である。水木氏は、戦時中一兵卒として、南方のニューブリテン島に送られたのだが、ある日敵の襲撃を受け、断崖絶壁に飛び込んだ同氏を除き、所属部隊は全滅する。その際、日本にいる母親が、息子が生死の境にいることを幻視したと言う。また、戦地で敵から逃げる同氏を、「妖怪ぬりかべ」が危険な進路に行かないように、立ち塞がって助けてくれたそうである。民俗学者の柳田国男によれば、妖怪ぬりかべは福岡県で目撃されたことがあると言う。日本の妖怪が、はるか遠くの南の島に現れたのも変であるが、似た性質の別の妖怪であったらしい。水木氏の漫画に登場する妖怪たちは、戦争中に同氏が、南の島で見聞きしたり体験した出来事がベースとなっていると聞いたことがある。

 今回内容を紹介した新聞記事は、宗教学者の内藤理恵子氏が書いたものだが、最後に同氏は、「人が手を尽くしてなお、どうにもならない時に現れる何者か。それもまた妖怪の一種なのでしょう。」と締め括っている。水木氏は実際に遭遇したのだろうが、中には、妖怪は空想の産物であると考える人もいる。京都新聞の日曜版別冊には、京都周辺で語り継がれている様々な妖怪について、京都マンガミュージアム製作の漫画で描かれているが、これを毎回読んでいる。漫画の妖怪は、中にはユーモラスなタイプもあり面白い。数ある妖怪の中には、珍しい自然現象や動物の特異な行動を擬人化したものも多いと思う。また、実際は悪霊の仕業であった出来事を、人々が妖怪の悪戯と考えたものもあるだろう。しかし、世の中には、それらでは説明がつかない現象を体験したことがある人々もいる。水木氏の母親の幻視も、その種の不思議な現象であったのではないだろうか。

 さて、ここまで妖怪の話を中心に書いて来たが、それは今回の記事のメインテーマでは無い。妖怪に助けられた水木氏の体験談を読み、天使の助けが現実にあることを書こうと思ったのである。天使に助けられた経験がある人の話は、これまでに何人からか聞いたことがある。その内の1人は、今は故人となった私の母親である。母は80歳になるまで、日本から一歩も出たことは無かったのだが、81歳になる直前、友人に誘われたからとイギリスに旅行することになった。以前から興味があった、ミリタリー・タトゥーという軍楽隊による祭典を観に、エジンバラに行くと言う。母を誘った友人は、海外経験が豊富で、彼女の目的は、お気に入りのダンサーの舞台を観ることだったようである。友人の案内でエジンバラの街歩きをしていた母は、途中ではぐれてしまった。初めて行った海外旅行で、現地の通貨も友人に預けており、英語も出来ない母は途方に暮れてしまった。その時、日本人の若い女性が日本語で声をかけて来た。事情を説明すると、そこのお土産屋さんで日本円を両替できますよと、母の代わりに現地通貨に替えてくれた。その後、彼女はタクシーをつかまえて、母の泊まっていたホテルを運転手に告げた。母はタクシーに乗る前にお礼を言おうとしたところ、何と、その女性は忽然と姿を消してしまったと言う。実は、母がイギリス旅行中、私と妻は、天使の助けを送ってくださいと、毎日神に祈っていたのだ。

 似たような話は、相模原市で長く牧師の働きをしていた先輩からも聞いたことがある。ある時、その牧師の教会の日曜礼拝に出席しようと、1人の女性が最寄りの駅に降り立った。ところが、初めての土地で道に迷ってしまい、ちょうど通りかかった婦人に道を尋ねた。上品な感じのするその婦人は、私がご案内しますからと、来た道を引き返し、教会に向って一緒に歩いてくれたと言う。すぐ近くまで来たので、もう大丈夫ですとお礼を言おうとして横を見ると婦人の姿が消えていた。周囲を見回してもどこにもおらず、不思議なことがあるものだと思いながら、目的地の教会に無事到着した。女性から事の顛末を聞いたその牧師は、彼女に、それは天使だったんですよと教えたと言う。その牧師自身、何回か天使を見たことがあったそうである。

「御使たちはすべて仕える霊であって、救を受け継ぐべき人々に奉仕するため、つかわされたものではないか」(ヘブル人への手紙 1:14 口語訳)


 聖書で御使とも書かれている天使は、神から遣わされた霊的存在である。ただし、堕天使となると、神に反逆して天から投げ落とされた元天使のことであり、聖書が悪魔や悪霊どもとして示している存在である。真の天使は、自分が人々から賞賛を受けるのを望まず、神の命令に忠実に従って行動するだけである。まして、礼拝を受けることは、断固として拒絶する。そして、礼拝されるべきは、天地万物の創造主である神だけであると教える。世の中には、科学では説明出来ない事象も存在し、それらの中には、霊的事象に分類されるようなものもある。人の思いが、空間を超越して別の人に伝わることも起こり得る。妖怪を見たことがあるのは、水木氏だけでなく、古今東西の多くの人々が体験したことであるだろう。どんなに科学が進歩しても、霊的な存在が消える訳ではない。それが、時には人の姿をとって現れることがある、神の天使であれば、私たちを助ける存在である。しかし、時には妖怪の姿をとって出現することがあるかも知れない、悪霊であれば、私たちを惑わそうとする存在である。私たちは、興味本位に天使を呼び出すような試みは決してしてはならない。しかし、神から遣わされた天使たちが存在し、彼らは、私たちを助けるために常に用意が出来ていることは、知っておいた方が良いだろう。真の天使は、イエスを主として告白するのだから、私たちは、別の霊により惑わされることを避けることも出来るであろう。

「愛する者たちよ。すべての霊を信じることはしないで、それらの霊が神から出たものであるかどうか、ためしなさい。多くのにせ預言者が世に出てきているからである。 あなたがたは、こうして神の霊を知るのである。すなわち、イエス・キリストが肉体をとってこられたことを告白する霊は、すべて神から出ているものであり、イエスを告白しない霊は、すべて神から出ているものではない。これは、反キリストの霊である。あなたがたは、それが来るとかねて聞いていたが、今やすでに世にきている」(ヨハネの第一の手紙 4:1−3 口語訳)