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ロシア人は平和の敵なのか(記事No.93)

 ロシアがウクライナに軍事侵攻を開始して以来、日本でも、新聞が連日1面トップで報道するなど、にわかに関心が高まっている。大半のマスコミの論調は、ロシアは国際合意を踏み躙る侵略国であり、弱小国ウクライナが健気に抗っているという構図を前提としている。米欧諸国は、ウクライナ東部地域での軍事衝突の回避を目的として2014年に結ばれた和平合意、ミンスク合意を、ロシアが一方的に破ったと非難している。しかし、ミンスク合意成立以降、ウクライナ東部のロシア人地域における自治権を侵害し、同地域のロシア系住民を迫害して来たのは、ウクライナ政府と国外から支援を受けたネオナチ勢力である。今般のロシアによる侵攻は、ウクライナ東部のロシア系住民の保護の他にも、同国のNATO加盟阻止、隠匿されている可能性がある核兵器原料(ウクライナは世界第9位のウラン産出国でもある。)や生物化学兵器の押収・破棄など複合的な目的を有していると考えられる。チェルノブイリ原子力発電所を制圧したのは、核テロの防止も目的であるだろう。

 ウクライナ政府の発表や西側メディアの報道には、明らかなフェイク画像など、ロシアの非道さを印象付けようとする偽情報も多く見られる。ロシア軍による民間施設の攻撃なども、どこまで真実なのか疑わしい。ここは、ロシア=悪、ウクライナ=善という、善悪二元論で状況を判断しない方が良いだろう。元はと言えば、2014年に、アメリカなどが支援する反ロシア勢力が、親露であった当時のヤヌコヴィッチ大統領をクーデターで追放したのが、ことの起こりである。マイダン革命(尊厳の革命)とも称される、そのクーデーターは、ソ連崩壊後のロシア弱体化計画に沿って、2004年のオレンジ革命にも現されたように、何年もかけて周到に準備されていたものである。現在のゼレンスキー大統領は2019年5月に就任しているが、彼の政権は、アメリカの傀儡であると断じても良い。

 さて、真偽ない混ぜになっている戦争報道も気になるが、それら情報発信の結果として、ロシアとロシア人に対するイメージが悪化していることも見逃せない。情報の真偽がどうであれ、米欧諸国のイメージ戦略は、これまでのところ成功している。プーチンはヒトラー並みの悪の首領であり、ロシア人は侵略者という訳である。しかし、プーチン氏が独裁者であることと、彼の行動に理があるかどうかは別問題であろう。また、ロシア軍がウクライナに侵攻したことで、ロシア人が侵略者であると決め付けられるものでは無い。もし、今回のロシアによる軍事侵攻を完全な侵略と断じ、ロシアの自国防衛の意図を言下に否定するのであれば、アメリカが第2次世界大戦後に行って来た軍事行動の多くも、侵略と見做すべきであろう。もちろん、他国領域での全ての軍事行動を侵略と見做す考え方もあるだろうが、その場合は、アメリカこそ最大の侵略国家と見做せる。

 今般のロシアーウクライナ紛争が起こる遥か以前から、日本には、ロシアに対する警戒感と恐怖心が存在していた。「恐(おそ)ロシア」などと言う人もいるように、ロシアは何をしでかすか分からない国というイメージである。元を辿れば、第2次世界大戦末期に、ソ連が一方的に日ソ不可侵条約を破棄して、満州、南樺太、千島列島に侵攻した歴史がある。特に満州では、非戦闘員の現地邦人に対して、殺害、強姦、略奪など暴虐の限りを尽くし、60万人近くの日本人捕虜がシベリアに抑留され、強制労働に従事させられたという、日本人としては恨み骨髄の国である。だが、70年以上前の戦争で起こったことを、当時生まれてもいなかった現代の大半の日本人が、今なお恨みに思うべきであろうか。当時、直接自分や家族が被害を受けた人々であれば、当然今も恨んでいるだろう。しかし、そうでない大半の日本人は、過去の歴史のことで、現在のロシアとロシア人を憎むべきではない。実際、ロシア人を憎悪する日本人は少ないとは思う。日本人の多くは、ロシアは怖い国、ロシア人はよく分からないが、良い人も悪い人もいるのでは、といったイメージを持っているのではないだろうか。

 私が今回の記事で最も書きたいことは、ロシアとウクライナとの問題をどう受け止めようとも、政府と一般国民とは分けて考えるべきと言うことである。ロシアを侵略国家と考える人であっても、一般のロシア人を平和の敵と見做すべきではないと思う。これは何も、ロシアに対してだけではない。私を含めて、日本人には中国政府≒中国共産党(中共)に対して強い警戒感と拒絶反応を有する人々が多い。しかし、中国政府がウイグルやチベットで、民族浄化にも等しい激しい人権弾圧を行っていたり、台湾に対して、武力併合の恫喝を行っているからと言って、中共党員や対日スパイでもない、一般の中国人を敵視することは正しくないと思う。警戒し防衛すべきは、中共政府や人民解放軍に対してであって、ごく普通の人々ではない。日本にも、ロシアにも、中国にも、どこの国にも、善人もいれば悪人もいる。何人であっても悪人とは関わりたくないが、何人であっても善人と知り合うことは、しばしば楽しい経験である。私たちは、人を人種や民族、国籍などの属性で偏り見るのでは無く、その人の人間性と言動で見極めることが必要だと思う。

「悪を行うすべての人には、ユダヤ人をはじめギリシヤ人にも、患難と苦悩とが与えられ、 善を行うすべての人には、ユダヤ人をはじめギリシヤ人にも、光栄とほまれと平安とが与えられる」(ローマ人への手紙 2:9−10 口語訳)
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核戦争の危機は当面回避(記事No.92)

 2022年2月22日、ロシアのプーチン大統領は、ウクライナ東部のロシア系住民が多数を占める地域にある、「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」を独立国家として承認する大統領令に署名した。同時に、ロシア軍を両国(地域)に派遣するよう、国防省に命じた。両地域には、既にロシア軍が進駐を開始したとも言われており、ウクライナ中央政府やネオナチ勢力による暴力的迫害から、ロシア系住民を守る動きに出ている。これに対して、米欧も対ロ制裁措置を発動する構えで、イギリスはロシアの5つの銀行と3人の個人に対する資産凍結を、ドイツはロシアからの天然ガスパイプライの運用停止を発表した。

 本ブログでも書いてきたように、欧米諸国を中心に巣食うグローバリストらは、ウクライナに危機を創出して、米ロの核戦争にまで持ち込もうとしていたと考えられる。しかし、イギリスとドイツによる第一弾の経済制裁が、あまりにもショボい内容であったり、自分の首を絞める結果が見えているところからも、ヨーロッパ諸国の腰の引けた対応がありありである。今後は、アメリカを中核とするNATOが、正規軍のウクライナ配備に踏み切るかが焦点であるが、現時点でほとんど行動を起こしていないところを見ると、ひとまずは今回も口先介入に終わる可能性が高い。米ロ直接軍事衝突の可能性が低くなったのは、世界の民衆にとっては朗報であるが、戦争を欲する者たちが、このまま引き下がるとは到底思えない。

 これまでのところは、NATOによる軍事介入の口実を与え得る、ウクライナへの全面侵攻を回避し、ロシア人住民が多数を占める東部国境地帯への軍進駐に留めた、プーチン大統領の戦略の方が上手であろう。そうなると、グローバリスト勢力の次の一手は、ウクライナでロシア軍の仕業に見せかけた大規模な偽攻撃を起こし、NATOの軍事行動を引き出そうとすることか。あるいは、ロシア国内で核テロ事件を起こすということも考えられる。どちらにせよ、今後、いわゆる偽旗事件が起こされる可能性が高い。当面は核戦争の危機は回避されたが、戦争が起きないよう(起こされないよう)、引き続き祈る必要があるだろう。

 米欧諸国や日本の報道では、プーチン大統領は悪の権化のように扱われることも多い。その場合、ロシアは、好戦的な覇権国家として位置付けられる。プーチン氏が独裁者であることは間違いないが、彼が周辺諸国を侵略しようと、虎視眈々と機会を窺っているということは事実と反する。歴史上、特にソ連時代においては、膨張主義が顕著であった。しかし、ソ連崩壊後のロシアは、領土的な野心と言うよりも、自国の安全保障のために、周辺諸国を米欧などとの緩衝地帯にしておくという戦略であろう。この点が、中国とは決定的に異なる。同じ独裁者であっても、プーチン氏は自国防衛のために軍事力を行使することを考えるが、習近平氏は領土的野心のために軍事力を強化している。どちらが世界の平和にとって脅威であるかは明らかであるが、米欧としては、経済的な相互依存の関係が深い中国とは、今は本格的に事を構えたくないのが本音ではないか。

 さて、幸い当面核戦争が勃発する可能性は低くなったが、ウクライナが世界の火薬庫である事実には変わりがない。また、東アジアでは、中共が台湾に対する恫喝を続けており、武力併合という邪悪な欲望を隠そうともしていない。ウクライナ東部とは違い、台湾国民は中国への併合も、中国の衛星国となることも望んでいないにも関わらず。そして、中東地域では、イスラエルとアラブ諸国やイランとの複雑な対立構造がある。特に、イランは、聖書の終末預言によれば、世の終わりの時にロシアと連合して、イスラエルに侵攻するはずである。聖書は、平和とは創り出すものであると教える。戦争が誰かによって創り出されるものであるのと同じく、私たちは、平和をも創り出すことが出来る。その意味においても、私たちは取るに足らない者たちではなく、誰もが世界平和のために役に立つ力を秘めている。祈りと愛の行いが、そのための主要な武器である。

「平和をつくり出す人たちは、さいわいである、彼らは神の子と呼ばれるであろう」(マタイによる福音書 5:9 口語訳)
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コロナ騒動の被害者たち(記事No.91)

 先週末、家族で、神戸にある馴染みのイタリアン・レストランで夕食を食べた。その店に通い始めてから、もうかれこれ10数年になる。ホテルオークラで洋食部門の料理長を務めていた知人より、神戸で開店した、新進気鋭のシェフの店があると紹介を受けたのが馴れ初めであった。以来、次男が3歳くらいの時からは、家族で年2、3回東京から訪れていた。大阪方面に出張の際は、わざわざ神戸に宿を取り、そのレストランで夕食を食べることにしていたし、取引先の接待にも使ったりした。今回も極上の料理を堪能し、会計を済ませた後、オーナーシェフが厨房から出てきて、4月末で店を閉じることにしたと話した。理由を聞くと、新型コロナ流行の影響で客が減り、これ以上持ち堪えられないと言う。話を聞いて驚くと同時に、このコロナ騒動を起こした者たち、また、自分たちの利益のために利用している者たちに対して、改めて心底怒りを覚えた。

 そのオーナーシェフは、若い頃ワーキングホリデーで訪れた南半球のある国で、将来レストランを開業したいと言う夢を持っている。もし、今般の閉店が、その夢が実現することに伴うものであったのなら、寂しいが嬉しいことでもある。私たち家族も、その国の彼の店を必ず訪ねるつもりである。彼は英語の勉強のため、AFN(米軍放送)を日常的に聴いていた。開業資金も、コツコツと貯めていただろう。その長年の努力が、ここ2年のコロナ騒動と、日本政府や自治体の対応の誤りにより、一時的にせよ、頓挫させられてしまった。飲食店に休業や営業時間の短縮などの協力を求め、社会生活における様々な行動の自粛など、国民に物心両面の負担を強いて来たのは、政治家や役人たちであり、彼らと共同歩調をとって来たのが、マスコミ人と医師や学者など専門家と称される人々である。その彼らは、新型コロナ流行の状況下でも、歳費、給与、報酬などの収入は保障されている。生活が保障されている人々が、仕事を減らせば生活が脅かされる人々に対して、ワケ知り顔で様々な自粛を求めてきた。これは、明らかに不道徳であり、不公正であろう。

 日本人は、もういい加減、自分たちの国が、国民を幸せにする国では無いことに気づくべきであろう。善良であることは良いことであるが、それを利用して人々を欺いて、自分たちの利益のために踏み台にしようとする者たちがいる。財務省が去る2月17日に公表したデータによれば、2021(令和3)年度の国民負担率、すなわち、税金と社会保険料などの負担合計は、前年度を0.1ポイント上回る48パーセントとなり、過去最大を更新したと言う。これでは、ほぼ五公五民であり、封建時代と変わらない。百姓は生かさず殺さずの考え方は、時代を超えて、現代日本の為政者や官僚に受け継がれていると言えよう。また、経済協力開発機構(OECD)の統計によれば、国民の平均年収において、日本は2015年に韓国に抜かれ、その差は年々開く一方である。中国との比較においても、彼の国は都市部と農漁村部との年収格差が大きいものの、都市部の住民に限って言えば、既に日本を上回っていると言われる。日本スゴイのテレビ番組を信じていると、このような現実は分からないと思う。実際は、日本人の庶民の人生は厳しい。幼い頃からの競争社会、子供の頃から偏差値教育に囚われ、大学生の約半数は奨学金と称する学資ローンを借りて、数百万円の借金を背負って社会に出て行く。就職しても組織の奴隷のように働かされ、勤労の喜びを感じられない人々も多い。やっと奨学金の返済が終われば、今度は住宅ローンである。70歳を超えても、生活のために働かざるを得ない人々が多くいる。先日、新潟県村上市の三幸製菓工場で発生した火災では、6人の死者の内4人が、深夜清掃勤務の、いずれも70歳前後の初老の婦人たちであった。深夜労働という点から思うに、彼女たちは皆、生きがいのためや健康維持のために働いていたのでは無いだろう。

 本ブログでも繰り返し書いてきたように、新型コロナのパンデミックは、意図的に引き起こされたものであり、ウイルスは人造のものであろう。その目的は、疫病対策を口実に人々の行動を制限し、ワクチン・パスポートなどの導入で、人々に対するコントロールを飛躍的に強めることである。そして、世界統一政府樹立へと大きく駒を進める計画である。この計画の首謀者は悪魔崇拝者たちの秘密集団であり、イルミナティ、カバール、ディープステート、グローバリストなど、様々な名称で呼ばれる者たちである。各国で彼らの手足となって動いている者たちは、悪魔崇拝者たちだけではなく、金や地位と引き換えに、その邪悪な計画の遂行に協力している者たちが多い。彼らにとっては、自分たちがいる国や下々の(と彼らが勝手に考えている)人々など、どうなってもいい存在である。2011年6月に、自民党の甘利明元経済産業大臣が、原発事故問題でテレビ東京のインタビューを受けた時、記者の質問に激昂し、「日本なんてどうなたっていいんだ。」と口走ったとされる。その一言に、彼らの本音が表されていると思う。そして、新型コロナ騒動において、人々を苦しめているのが、同じ彼らである。

「弱者を虐げる者は造り主を嘲る。造り主を尊ぶ人は乏しい人を憐れむ」(箴言 14:31 新共同訳)


 これまで約2年間続いて来た新型コロナ騒動で、多くの人々が苦しみ、生活が激変した人々も少なくない。中には、コロナに感染したと診断された祖父母や親の見舞いも出来ず、死に目にも会えなかった人々もいる。私の人間関係の中でも、コロナ陽性者とされた祖母の死に目に会えず、葬儀も出せなかった人がいて、「コロナが憎い。」という言葉を直接聞いた。悲痛な面持ちのその人には言えなかったが、そのように仕向けたのはコロナ・ウイルスではなく、コロナ・パンデミックを利用している者たちである。日本における新型コロナ・ウイルス感染者数は、今月半ばでピークを越えたとも言われており、2月21日の東京都内の感染者数も、約1カ月ぶりに1万人を下回ったとの発表である。一方で、今日聴いたNHKラジオのニュースでは、子供の感染者が増えており、5歳から11歳のワクチン接種が重要であるとの、ある小児科医のコメントが流されていた。彼らは、ワクチン接種を受ける子供たちの命と健康に、推奨者として責任を持つ覚悟なのだろうか?これ以上、コロナ騒動による被害者が増えないことを望んでいるが、日本社会についても、悲劇的な近未来を予想せざるを得ない。神からの知恵を祈り求めることが、サバイバルのためにも重要である。
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天使か妖怪か(記事No.90)

 2022年2月15日付の東京新聞に、妖怪にまつわる面白い記事が掲載されていた。「ゲゲゲの鬼太郎」などの妖怪漫画を世に出した、故水木しげる氏の体験談である。水木氏は、戦時中一兵卒として、南方のニューブリテン島に送られたのだが、ある日敵の襲撃を受け、断崖絶壁に飛び込んだ同氏を除き、所属部隊は全滅する。その際、日本にいる母親が、息子が生死の境にいることを幻視したと言う。また、戦地で敵から逃げる同氏を、「妖怪ぬりかべ」が危険な進路に行かないように、立ち塞がって助けてくれたそうである。民俗学者の柳田国男によれば、妖怪ぬりかべは福岡県で目撃されたことがあると言う。日本の妖怪が、はるか遠くの南の島に現れたのも変であるが、似た性質の別の妖怪であったらしい。水木氏の漫画に登場する妖怪たちは、戦争中に同氏が、南の島で見聞きしたり体験した出来事がベースとなっていると聞いたことがある。

 今回内容を紹介した新聞記事は、宗教学者の内藤理恵子氏が書いたものだが、最後に同氏は、「人が手を尽くしてなお、どうにもならない時に現れる何者か。それもまた妖怪の一種なのでしょう。」と締め括っている。水木氏は実際に遭遇したのだろうが、中には、妖怪は空想の産物であると考える人もいる。京都新聞の日曜版別冊には、京都周辺で語り継がれている様々な妖怪について、京都マンガミュージアム製作の漫画で描かれているが、これを毎回読んでいる。漫画の妖怪は、中にはユーモラスなタイプもあり面白い。数ある妖怪の中には、珍しい自然現象や動物の特異な行動を擬人化したものも多いと思う。また、実際は悪霊の仕業であった出来事を、人々が妖怪の悪戯と考えたものもあるだろう。しかし、世の中には、それらでは説明がつかない現象を体験したことがある人々もいる。水木氏の母親の幻視も、その種の不思議な現象であったのではないだろうか。

 さて、ここまで妖怪の話を中心に書いて来たが、それは今回の記事のメインテーマでは無い。妖怪に助けられた水木氏の体験談を読み、天使の助けが現実にあることを書こうと思ったのである。天使に助けられた経験がある人の話は、これまでに何人からか聞いたことがある。その内の1人は、今は故人となった私の母親である。母は80歳になるまで、日本から一歩も出たことは無かったのだが、81歳になる直前、友人に誘われたからとイギリスに旅行することになった。以前から興味があった、ミリタリー・タトゥーという軍楽隊による祭典を観に、エジンバラに行くと言う。母を誘った友人は、海外経験が豊富で、彼女の目的は、お気に入りのダンサーの舞台を観ることだったようである。友人の案内でエジンバラの街歩きをしていた母は、途中ではぐれてしまった。初めて行った海外旅行で、現地の通貨も友人に預けており、英語も出来ない母は途方に暮れてしまった。その時、日本人の若い女性が日本語で声をかけて来た。事情を説明すると、そこのお土産屋さんで日本円を両替できますよと、母の代わりに現地通貨に替えてくれた。その後、彼女はタクシーをつかまえて、母の泊まっていたホテルを運転手に告げた。母はタクシーに乗る前にお礼を言おうとしたところ、何と、その女性は忽然と姿を消してしまったと言う。実は、母がイギリス旅行中、私と妻は、天使の助けを送ってくださいと、毎日神に祈っていたのだ。

 似たような話は、相模原市で長く牧師の働きをしていた先輩からも聞いたことがある。ある時、その牧師の教会の日曜礼拝に出席しようと、1人の女性が最寄りの駅に降り立った。ところが、初めての土地で道に迷ってしまい、ちょうど通りかかった婦人に道を尋ねた。上品な感じのするその婦人は、私がご案内しますからと、来た道を引き返し、教会に向って一緒に歩いてくれたと言う。すぐ近くまで来たので、もう大丈夫ですとお礼を言おうとして横を見ると婦人の姿が消えていた。周囲を見回してもどこにもおらず、不思議なことがあるものだと思いながら、目的地の教会に無事到着した。女性から事の顛末を聞いたその牧師は、彼女に、それは天使だったんですよと教えたと言う。その牧師自身、何回か天使を見たことがあったそうである。

「御使たちはすべて仕える霊であって、救を受け継ぐべき人々に奉仕するため、つかわされたものではないか」(ヘブル人への手紙 1:14 口語訳)


 聖書で御使とも書かれている天使は、神から遣わされた霊的存在である。ただし、堕天使となると、神に反逆して天から投げ落とされた元天使のことであり、聖書が悪魔や悪霊どもとして示している存在である。真の天使は、自分が人々から賞賛を受けるのを望まず、神の命令に忠実に従って行動するだけである。まして、礼拝を受けることは、断固として拒絶する。そして、礼拝されるべきは、天地万物の創造主である神だけであると教える。世の中には、科学では説明出来ない事象も存在し、それらの中には、霊的事象に分類されるようなものもある。人の思いが、空間を超越して別の人に伝わることも起こり得る。妖怪を見たことがあるのは、水木氏だけでなく、古今東西の多くの人々が体験したことであるだろう。どんなに科学が進歩しても、霊的な存在が消える訳ではない。それが、時には人の姿をとって現れることがある、神の天使であれば、私たちを助ける存在である。しかし、時には妖怪の姿をとって出現することがあるかも知れない、悪霊であれば、私たちを惑わそうとする存在である。私たちは、興味本位に天使を呼び出すような試みは決してしてはならない。しかし、神から遣わされた天使たちが存在し、彼らは、私たちを助けるために常に用意が出来ていることは、知っておいた方が良いだろう。真の天使は、イエスを主として告白するのだから、私たちは、別の霊により惑わされることを避けることも出来るであろう。

「愛する者たちよ。すべての霊を信じることはしないで、それらの霊が神から出たものであるかどうか、ためしなさい。多くのにせ預言者が世に出てきているからである。 あなたがたは、こうして神の霊を知るのである。すなわち、イエス・キリストが肉体をとってこられたことを告白する霊は、すべて神から出ているものであり、イエスを告白しない霊は、すべて神から出ているものではない。これは、反キリストの霊である。あなたがたは、それが来るとかねて聞いていたが、今やすでに世にきている」(ヨハネの第一の手紙 4:1−3 口語訳)
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挑発するアメリカと臨戦体制のロシア(記事No.89)

 昨夜、珍しく次のブログ記事テーマに関する夢を見た。預言的夢という確信を持つまでには至らなかったが、丁度書こうと思っていたタイミングでもあったので、今回の記事としてまとめた。以前に、記事No.75や同76などで書いたことのアップデート版であるが、ウクライナ情勢を巡る、アメリカを中心とするNATO諸国とロシアのせめぎ合いについてである。ただし、NATO諸国と言っても、この問題につては、加盟国の中でも意見の隔たりがあると見られる。ドイツなどは、ロシアからの天然ガス・パイプラインが完成していることもあって、ウクライナにおける戦争勃発は避けたいところであり、同国への軍事支援にも慎重である。東ヨーロッパ諸国も、本音のところでは、平和的解決に期待していると思われる。NATO内の強硬派は、何と言っても中核的加盟国のアメリカであり、ウクライナ問題とは、事実上アメリカとロシアの問題である。

 日本を含む西側諸国の政府発表や報道では、ロシアの方に非があるとのスタンスであるが、それは状況を正しく捉えているのだろうか?ロシアの主張は、ウクライナのNATO加盟を認めないと言うことを含む、NATOの東方拡大停止と、ルーマニアに配備されているイージス・アショアの撤去などである。こららの主張をNATO諸国側は拒否していることで、ロシアとしては段階的に軍事的圧力を強めて、力を背景とした外交を進めて来た。NATO諸国も対抗して、ウクライナへの兵器供与などの支援を行なって来た。以前の記事でも触れたが、1962年のキューバ危機と役者が入れ替わったような状況である。1962年には、キューバに核ミサイル基地の建設を進めて来たソ連に対して、ケネディ政権率いるアメリカが、核戦争勃発のリスクを承知でカリブ海上で海上封鎖を行い、結果的にソ連のフルシチョフ政権は核ミサイル基地を撤去し、核戦争は回避された。今回、ウクライナがNATOに加盟することになれば、いつでもアメリカは同国内に基地を設置し、核ミサイルを含む、ロシアを射程内に捉える兵器を配備可能となる。ロシアが、このような事態を断固阻止しようとするのは、当然の反応ではないだろうか。

 本記事において、アメリカと書いて来たが、正確には、アメリカに寄生するグローバリストらのことである。断言しても良いが、アメリカの一般国民の大半は、軍人らを含めて、ロシアとの直接軍事衝突など望んでいない。まして、核戦争の危機など、真っ平御免であろう。何も今に始まったことではないが、ワシントンD.C.の政治家や高級官僚らと彼らのスポンサーたちと、アメリカ一般国民の民意との間には、大きな乖離がある。なぜ、そのようなことが罷り通るのかは、エリートを自認する前者に属する者たちの多くは、ワン・ワールドを指向しているからであり、彼らはアメリカ国民に仕えるという意識など、持ち合わせていないからである。そのような状況を打破して、アメリカを国民の手に取り戻そうとしたのが、トランプ氏と彼を支持する国民であった。アメリカの政府や軍の内部では、今も水面下では激しい権力闘争が進行中であろうが、残念なことに、形式的にはバイデン政権がアメリカの外交を担っている。つまり、グローバリストらがアメリカ外交を進めているのである。

 なぜ、グローバリストらが、ロシアを挑発し、戦争へと追い込もうとしているのか。それは、彼らの世界統一計画を実現するには、ロシアの存在が邪魔だからである。同時に、自由主義国としてのアメリカも不要であり、米露を衝突させて、双方をすり潰す、あるいは消滅させることが必要と考えているためであろう。精神的に倒錯しているグローバリストらは、自分達が被害を受けない限り、核戦争の勃発を望んでおり、それに向けて動いていると見て良いだろう。2014年6月に、フランスのノルマンディで、第2次世界大戦中のノルマンディ上陸作戦70周年記念式典が開催され、戦争当時連合国を構成していた各国の首脳らが招待された。この時、屋外会場の巨大スクリーンには、第2次世界大戦中の様々な出来事が映し出された。広島か長崎に投下された原爆のキノコ雲が映し出された時、アメリカのオバマ大統領(当時)は、ガムを噛みながら拍手をした。これに対して、ロシアのプーチン大統領は、その瞬間、十字を切っていたのがカメラに捉えられていた。プーチン氏が、ロシア正教の生きた信仰を持っていたのかどうかは分からないが、少なくとも、原爆で殺された多くの人々を悼む気持ちは持っていたのであろう。グローバリストであるオバマ氏と、そうでは無いプーチン氏の、対照的な行動にも象徴されているように、核戦争を望んでいるのは、ロシアの方では無いことは明らかだ。ただし、ロシアは、自国の安全が決定的に損なわれようとするのを、指を咥えて見ているほどお人好しではない。

 ここに来てアメリカ政府は、いつでもロシアによるウクライナ侵攻が起こり得るというメッセージを発している。確かにロシアは、臨戦体制を既に整えていると思われる。しかし、これまで挑発して来たのは、既に書いたように、アメリカの方である。ウクライナはNATO加盟国では無いので、例えロシアの侵攻を受けても、アメリカが参戦する権利も義務も無い。その意味では、ウクライナ人には気の毒かも知れないが、短期間の局地戦で終わるべきものである。しかし、グローバリストらは、千載一遇の機会を逃さないであろう。彼らには、ロシアを対アメリカの核戦争へと引き摺り出す計画が既にあり、具体的な道筋も何通りかシミュレーション済みであろう。米露の全面核戦争が勃発するなら、イスラエルも巻き込み、エゼキエル書などの聖書預言が成就することになる。一昨年までは、ここまで一気に終末が近づくとは思っていなかった。神が、恵みの時をもう少し延ばして下さることを、切に願う。私たちは、戦争が回避されるよう、祈らなければならない。

「万物の終りが近づいている。だから、心を確かにし、身を慎んで、努めて祈りなさい」(ペテロの第一の手紙 4:7 口語訳)
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綻び始めた新型コロナ全体主義(記事No.88)

 2月に入ってから、対応に時間を要するイレギュラーな用件が何件かあり、ついブログの更新間隔が開いてしまった。そう言う訳で、約1週間前に骨子を書いていた記事を、本日アップしたい。イスラエルの代表的な新聞の1つである、ハアレツの2022年2月4日付電子版記事によれば、同国政府は、同日付でワクチン接種証明(ワクチン・パスポート)の廃止を決定した。この決定は、同国の憲法司法委員会の承認を経て、2月7日より発効するとのことである。これにより、ホテル、レストラン、ジム、映画館等で、ワクチン非接種者の立ち入り禁止が解除される。結婚式やパーティなどの、「感染リスクの高いイベント」には、引き続きワクチン接種証明が必要となる。イスラエル政府による、ワクチン・パスポートの廃止理由は、新型コロナ・ウイルス感染者数が減少しているからとだと言う。しかし、同国の新型コロナ感染死亡者数は今も増加中であり、過去最大を更新し続けている。

 これまで取り上げて来たように、これまで自由主義国家とされてきた諸国のいくつかでは、新型コロナ流行に対する防疫上の措置を口実に、国民の自由を不必要に制約することが進められて来た。それらの実態は、もはや自由主義ではなく、全体主義と見做せるレベルである。これに対して、自由を制約される側の民衆の抵抗も激しく、各国で抗議行動が継続中である。カナダでは、ワクチン接種義務化に反対するトラック・ドライバーたちが、コンボイを連ねて続々と首都オタワなどに集結しており、多くの国民が、彼らとの連帯の意志を示すために沿道に出ている。同国のトルドー首相は、抗議行動の代表者らとの面会を拒否し、オタワ市のワトソン市長は、トラック・ドラーバーたちを公共の安全に対する脅威と公言している。口実を作って抗議行動を弾圧しようとの思惑であろうが、彼らが追い込まれていることの証左でもあるだろう。同様の「フリーダム・コンボイ」は、オーストラリアでも始まったと聞く。

 既にイギリスでは、本年1月19日付で、新型コロナに関わる全国的な行動規制の緩和に踏み切っている。これにより、イギリスでは、医療従事者を除き、新型コロナ・ワクチンの接種義務は撤廃され、ワクチン・パスポートは廃止された。ヨーロッパ諸国では、オーストリアのように、ワクチン未接種者は、最高で3,400ユーロ(約45万円)の罰金が課せられる国がある。その一方で、イギリスやスカンジナビア諸国のように、ほとんどの行動規制やワクチン接種義務を撤廃した国々もあり、対応が分かれている。いずれにせよ、グローバリストらが意図する、パンデミックを口実とする全体主義への移行は、一部の国々では既に頓挫しつつあると言える。

 翻って日本では、3回目接種人数が政府の目標数を下回っているため、岸田首相が1日100万回のワクチン接種を実現することを掲げて、発破をかけている。日本の行動規制は諸外国に比べて緩いのはいいが、今なおワクチン接種に固執しているのは、非科学的であるだけでなく、政治的にも流れを見誤っていると言えよう。海外では、コロナ・ワクチン被害者らによる、夥しい数の訴訟が提起されることを見越してか、既に逃げを打ち始めているワクチン推進者も出始めている。アメリカでは、去る1月24日に開催された上院議員による公聴会で、国防総省の国防医療疫学データベースに記録された、ワクチン接種後有害事象のデータが明らかにされた。それによると、2020年における軍人らの全ての傷病件数は約197万件であったのに対して、軍内における集団接種導入後の2021年の件数は約2,152万件となり、11倍近くも増加している。傷病種別ごとの個別件数も明らかになっているが、あらゆる種類の傷病が激増している。国防総省からこのようなデータが示されたと言うことは、単なる軍内のワクチン推進反対派による内部告発ではなく、組織として、問題を認めざるを得ない段階に来ていると思われる。

 同様に、各国で保健当局者などによる、ワクチン接種キャンペーン継続への懸念表明なども出されるようになって来た。アリバイ作りと言うことも大いにあるだろうが、ワクチンに感染予防効果が無く、逆に、接種を繰り返すことによる、免疫低下による感染拡大効果を否定出来なくなって来ているのであろう。冒頭に挙げたイスラエルの場合、3回目のブースター接種を受けた人は、人口の約54パーセントとされているが、接種率が高まるほど、感染者数も増加するという皮肉な結果となっている。同国政府が新型コロナ行動規制を緩和したり、ワクチン・パスポートを廃止したことは、これらの施策が一定の成果を上げたと言う建前とは裏腹に、実は防疫上有効では無かったと判断しているのであろう。

 本ブログでも、これまで書いて来たように、新型コロナ・ウイルスの流行は、グローバリストら(あるいは悪魔崇拝者らと呼ぶべきか)による、世界統一政府樹立の目標達成のための手段として起こされたと見做すべきであろう。彼らとしては、パンデミックの当初は、計画が順調に進んでいるようにも思えたであろう。しかし、各国で民衆の抵抗が激しく、科学者や医師などにも、少数の良心的な人々が残っていた。彼らのうちのある者は、勇敢にも、新型コロナ・パンデミックやワクチンの真実について声を上げて来た。そのうちの1人が、去る2月8日に死去した、ノーベル医学賞を受賞したフランス人科学者の、リュック・モンタニエ博士であった。モンタニエ氏は、コロナ・ウイルスが人造であることを公に語り、ワクチンの危険性を告発して、激しい誹謗中傷を受けて来た。反対者からは、晩節を汚したかのように言われたが、世界の民衆にとっては、良心の器であったと思う。モンタニエ氏ほどの高名な人物でなくとも、日本にも世界にも、それぞれの持ち場において、新型コロナ全体主義と戦う人々が多くいる。敵は決して諦めた訳ではなく、綻び始めた新型コロナ・パンデミックに代わる、別のイベントを準備中であろう。神を信頼し、恐れずに生きることが重要であろう。

「人々を恐れてはかならない。覆われているもので現されないものはなく、隠されているもので知られずに済むものはないからである。 わたしが暗闇であなたがたに言うことを、明るみで言いなさい。耳打ちされたことを、屋根の上で言い広めなさい。 体は殺しても、魂を殺すことのできない者どもを恐れるな。むしろ、魂も体も地獄で滅ぼすことのできる方を恐れなさい」(マタイによる福音書 10:26-28 新共同訳)
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胎児の人権は守られているのか?(記事No.87)

 ここ最近、日本で最も多く取り上げられているニュースは、新型コロナ・オミクロン株の感染拡大であろう。それが、本当に恐るべきことであるとは思えないが、日々感染者(正確には検査陽性者)が増加して行く様は、人々の警戒心を高め、関心を引き付けるのも無理はない。これは何も新型コロナに限った話では無いが、政府やマスコミが何かを大々的に知らせようとする時には、その陰で、国民が不利益を受けるような、他の事態が進行中ということがよくある話である。例えば、有名芸能人のスキャンダルなどが大きく報道されている時、国会では、国民生活に負の影響を及ぼしかねない法律の改廃について、淡々と審議されてる場合もあるだろう。今回は、胎児にとって危険な話がひっそりと進められていた。

 毎日新聞電子版2022年1月31日付記事によると、新型出生前診断について、国や関連学会などが参加する運営委員会が、検査対象を拡大する案をまとめたとのことである。この運営委員会のメンバー構成や事務局などの詳細は、厚生労働省に忖度してか報道されていない。新型出生前診断とは、妊婦の血液から胎児の染色体疾患を検査するものであり、現在は、おおむね35歳以上の妊婦が対象とされる。これを、検査の前提となる情報提供やカウンセリングを、胎児の病気に不安を持つ全ての妊婦に認める方針で、今春以降の実施を目指しているそうだ。この検査は、ダウン症など3つの疾患の可能性を調べるものであり、妊婦の採血で検査出来る手軽さがあると言う。これまでのところ、この検査で胎児の疾患が判明し、その後検査結果が確定したケースでは、その内約9割の妊婦が中絶を選択しているそうだ。記事の中でも、特定の疾患の排除や命の選別を助長する恐れがあり、慎重な運用が求められるとの指摘がなされている。実際、染色体疾患がある子を育てる親の調査では、8割超が外的な圧力による中絶はあり得ると答えたと言う。

 この記事を読んだ時、真っ先に思い浮かべたのは、2011年3月の福島第1原発事故による放射能汚染により、特に福島県浜通り地域などの重汚染地帯で、いったいどれだけの胎児が影響を受けたのかということである。胎児の出生前診断を今後も認めるのであれば、全国の市町村別に年間の検査実施数と、異常が認められた割合を公表する必要がある。これを市町村別の年間中絶数と突き合わせれば、重汚染地帯の胎児に放射能がどれくらい影響を与え、その結果どれくらいの胎児が中絶されたのか、統計的な検証も可能となる。もちろん、そのような検証の目的は、妊婦と胎児を守るために実施されるべきであり、本来は希望する妊婦全員を、原発事故直後に、重汚染地帯から移住させるべきであったのは言うまでもない。これは、子供たちについても同様である。

 出生前診断については、恐ろしい話が他にもある。ロイター通信電子版の2021年7月9日付記事によれば、中国の遺伝子解析最大手BGIグループ(華大集団)が中国人民解放軍と共同開発した出生前検査について、診断データが国家安全保障に直接関連する場合には、中国当局に提出可能な規定となっていると言う。同社の出生前検査は、これまでに世界中の妊婦800万人以上に利用されている。アメリカ国家テロ対策センターは、同社の出生前診検査を受ける海外の女性は、中国情報機関へのデータ提供を認めている個人情報保護規定に注意すべきだと警鐘を鳴らした。中国の人民解放軍や情報機関と協力関係にあるBGIグループが、何の目的で、海外諸国を含む妊婦と胎児の遺伝子データを収集しているのだろうか?中国国内では、少数民族出身者を正確に特定して、治安管理に活用することが考えられる。外国での遺伝子情報収集は、特定の人種や民族をターゲットにした、生物兵器の開発に活用する目的があるのかも知れない。いずれにせよ、中共政権が邪悪な意図を有していることは疑い無い。

 さて、ここまで出生前診断に潜む懸念を挙げたが、最も肝心なことは、胎児の人権が守られるのかと言うことである。中絶については、長年世界の多くの国々で議論が行われて来た。英語圏では、女性が中絶する権利を優先することをプロ・チョイス、胎児を守ることを優先することをプロ・ライフと呼ぶ。ポリティカル・コレクトネス的には、プロ・チョイスが正当とされる場合が多い。一般的には、リベラルな政治思想を有するとされる人々の中で、プロ・チョイスの支持者が多い。これに対して、保守的な政治思想を有する人々の中では、プロ・ライフの支持者が多い。日本の場合は、国民的議論が盛り上がっているとは言えないほど、中絶の権利が当然のこととして、多くの人々に受け止められていると思う。日本で中絶の法的根拠は、母体保護法(旧優生保護法)に定められている。同法の規定では、人工妊娠中絶を行うことが出来るのは、妊娠の継続または分娩が身体的または経済的理由により、母体の健康を著しく害するおそれのある場合、並びに暴行または脅迫により姦淫されて妊娠した場合となっている。

 厚生労働省の統計では、2020(令和2)年の人口中絶数は145,340件であった。1949年以降の統計では、これまでのピークは、1955(昭和30)年の約117万件であった。以降は、減少傾向が続き、2012(平成24)年からは、20万人を切って推移している。長期的には大幅に減少してはいるものの、毎年10数万人の胎児が、出生することなく生涯を終えている状況がある。母体が危険な場合などでは、究極の選択を迫られる場合もあるだろう。強姦による妊娠の場合では、妊婦が中絶を選択したなら、その血の責任は犯人の方にあると思える。問題は、経済的理由を認めていることであろう。仮に妊婦が経済的に困窮しており、夫や恋人も支えることが出来ない、あるいは支えようとしないのであれば、国が責任を持って、安心して出産、育児が出来るように支援すべきであろう。世界には、受胎の瞬間から法的保護の対象となると、憲法で規定している国々もある。近い将来、憲法改正への具体的動きがあるかも知れない日本の政治状況であるが、どうせ議論するなら、胎児の権利の保護も是非対象に含めてもらいたいと思う。最後に、胎児の人権にも関連した、聖書の言葉をいくつか挙げておきたい。神が胎児を深く愛され、彼らに目を留めておられることが分かるであろう。

「助産婦たちは神を畏れていたので、エジプトの王が命じたとおりにはせず、生まれた男の子を生かしておいた」(出エジプト記 1:17 )

「私を胎内に造った方は 彼らをも造られたのではないか。唯一の方が私たちを 母の胎に形づくられたのではないか」(ヨブ記 31:15)

「母が身ごもったときから 私はあなたに託されていた。母の胎にいたときから、あなたはわが神」(詩篇 22:11)(いずれも聖書協会共同訳)
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