ロシアがウクライナに軍事侵攻を開始して以来、日本でも、新聞が連日1面トップで報道するなど、にわかに関心が高まっている。大半のマスコミの論調は、ロシアは国際合意を踏み躙る侵略国であり、弱小国ウクライナが健気に抗っているという構図を前提としている。米欧諸国は、ウクライナ東部地域での軍事衝突の回避を目的として2014年に結ばれた和平合意、ミンスク合意を、ロシアが一方的に破ったと非難している。しかし、ミンスク合意成立以降、ウクライナ東部のロシア人地域における自治権を侵害し、同地域のロシア系住民を迫害して来たのは、ウクライナ政府と国外から支援を受けたネオナチ勢力である。今般のロシアによる侵攻は、ウクライナ東部のロシア系住民の保護の他にも、同国のNATO加盟阻止、隠匿されている可能性がある核兵器原料(ウクライナは世界第9位のウラン産出国でもある。)や生物化学兵器の押収・破棄など複合的な目的を有していると考えられる。チェルノブイリ原子力発電所を制圧したのは、核テロの防止も目的であるだろう。
ウクライナ政府の発表や西側メディアの報道には、明らかなフェイク画像など、ロシアの非道さを印象付けようとする偽情報も多く見られる。ロシア軍による民間施設の攻撃なども、どこまで真実なのか疑わしい。ここは、ロシア=悪、ウクライナ=善という、善悪二元論で状況を判断しない方が良いだろう。元はと言えば、2014年に、アメリカなどが支援する反ロシア勢力が、親露であった当時のヤヌコヴィッチ大統領をクーデターで追放したのが、ことの起こりである。マイダン革命(尊厳の革命)とも称される、そのクーデーターは、ソ連崩壊後のロシア弱体化計画に沿って、2004年のオレンジ革命にも現されたように、何年もかけて周到に準備されていたものである。現在のゼレンスキー大統領は2019年5月に就任しているが、彼の政権は、アメリカの傀儡であると断じても良い。
さて、真偽ない混ぜになっている戦争報道も気になるが、それら情報発信の結果として、ロシアとロシア人に対するイメージが悪化していることも見逃せない。情報の真偽がどうであれ、米欧諸国のイメージ戦略は、これまでのところ成功している。プーチンはヒトラー並みの悪の首領であり、ロシア人は侵略者という訳である。しかし、プーチン氏が独裁者であることと、彼の行動に理があるかどうかは別問題であろう。また、ロシア軍がウクライナに侵攻したことで、ロシア人が侵略者であると決め付けられるものでは無い。もし、今回のロシアによる軍事侵攻を完全な侵略と断じ、ロシアの自国防衛の意図を言下に否定するのであれば、アメリカが第2次世界大戦後に行って来た軍事行動の多くも、侵略と見做すべきであろう。もちろん、他国領域での全ての軍事行動を侵略と見做す考え方もあるだろうが、その場合は、アメリカこそ最大の侵略国家と見做せる。
今般のロシアーウクライナ紛争が起こる遥か以前から、日本には、ロシアに対する警戒感と恐怖心が存在していた。「恐(おそ)ロシア」などと言う人もいるように、ロシアは何をしでかすか分からない国というイメージである。元を辿れば、第2次世界大戦末期に、ソ連が一方的に日ソ不可侵条約を破棄して、満州、南樺太、千島列島に侵攻した歴史がある。特に満州では、非戦闘員の現地邦人に対して、殺害、強姦、略奪など暴虐の限りを尽くし、60万人近くの日本人捕虜がシベリアに抑留され、強制労働に従事させられたという、日本人としては恨み骨髄の国である。だが、70年以上前の戦争で起こったことを、当時生まれてもいなかった現代の大半の日本人が、今なお恨みに思うべきであろうか。当時、直接自分や家族が被害を受けた人々であれば、当然今も恨んでいるだろう。しかし、そうでない大半の日本人は、過去の歴史のことで、現在のロシアとロシア人を憎むべきではない。実際、ロシア人を憎悪する日本人は少ないとは思う。日本人の多くは、ロシアは怖い国、ロシア人はよく分からないが、良い人も悪い人もいるのでは、といったイメージを持っているのではないだろうか。
私が今回の記事で最も書きたいことは、ロシアとウクライナとの問題をどう受け止めようとも、政府と一般国民とは分けて考えるべきと言うことである。ロシアを侵略国家と考える人であっても、一般のロシア人を平和の敵と見做すべきではないと思う。これは何も、ロシアに対してだけではない。私を含めて、日本人には中国政府≒中国共産党(中共)に対して強い警戒感と拒絶反応を有する人々が多い。しかし、中国政府がウイグルやチベットで、民族浄化にも等しい激しい人権弾圧を行っていたり、台湾に対して、武力併合の恫喝を行っているからと言って、中共党員や対日スパイでもない、一般の中国人を敵視することは正しくないと思う。警戒し防衛すべきは、中共政府や人民解放軍に対してであって、ごく普通の人々ではない。日本にも、ロシアにも、中国にも、どこの国にも、善人もいれば悪人もいる。何人であっても悪人とは関わりたくないが、何人であっても善人と知り合うことは、しばしば楽しい経験である。私たちは、人を人種や民族、国籍などの属性で偏り見るのでは無く、その人の人間性と言動で見極めることが必要だと思う。
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ウクライナ政府の発表や西側メディアの報道には、明らかなフェイク画像など、ロシアの非道さを印象付けようとする偽情報も多く見られる。ロシア軍による民間施設の攻撃なども、どこまで真実なのか疑わしい。ここは、ロシア=悪、ウクライナ=善という、善悪二元論で状況を判断しない方が良いだろう。元はと言えば、2014年に、アメリカなどが支援する反ロシア勢力が、親露であった当時のヤヌコヴィッチ大統領をクーデターで追放したのが、ことの起こりである。マイダン革命(尊厳の革命)とも称される、そのクーデーターは、ソ連崩壊後のロシア弱体化計画に沿って、2004年のオレンジ革命にも現されたように、何年もかけて周到に準備されていたものである。現在のゼレンスキー大統領は2019年5月に就任しているが、彼の政権は、アメリカの傀儡であると断じても良い。
さて、真偽ない混ぜになっている戦争報道も気になるが、それら情報発信の結果として、ロシアとロシア人に対するイメージが悪化していることも見逃せない。情報の真偽がどうであれ、米欧諸国のイメージ戦略は、これまでのところ成功している。プーチンはヒトラー並みの悪の首領であり、ロシア人は侵略者という訳である。しかし、プーチン氏が独裁者であることと、彼の行動に理があるかどうかは別問題であろう。また、ロシア軍がウクライナに侵攻したことで、ロシア人が侵略者であると決め付けられるものでは無い。もし、今回のロシアによる軍事侵攻を完全な侵略と断じ、ロシアの自国防衛の意図を言下に否定するのであれば、アメリカが第2次世界大戦後に行って来た軍事行動の多くも、侵略と見做すべきであろう。もちろん、他国領域での全ての軍事行動を侵略と見做す考え方もあるだろうが、その場合は、アメリカこそ最大の侵略国家と見做せる。
今般のロシアーウクライナ紛争が起こる遥か以前から、日本には、ロシアに対する警戒感と恐怖心が存在していた。「恐(おそ)ロシア」などと言う人もいるように、ロシアは何をしでかすか分からない国というイメージである。元を辿れば、第2次世界大戦末期に、ソ連が一方的に日ソ不可侵条約を破棄して、満州、南樺太、千島列島に侵攻した歴史がある。特に満州では、非戦闘員の現地邦人に対して、殺害、強姦、略奪など暴虐の限りを尽くし、60万人近くの日本人捕虜がシベリアに抑留され、強制労働に従事させられたという、日本人としては恨み骨髄の国である。だが、70年以上前の戦争で起こったことを、当時生まれてもいなかった現代の大半の日本人が、今なお恨みに思うべきであろうか。当時、直接自分や家族が被害を受けた人々であれば、当然今も恨んでいるだろう。しかし、そうでない大半の日本人は、過去の歴史のことで、現在のロシアとロシア人を憎むべきではない。実際、ロシア人を憎悪する日本人は少ないとは思う。日本人の多くは、ロシアは怖い国、ロシア人はよく分からないが、良い人も悪い人もいるのでは、といったイメージを持っているのではないだろうか。
私が今回の記事で最も書きたいことは、ロシアとウクライナとの問題をどう受け止めようとも、政府と一般国民とは分けて考えるべきと言うことである。ロシアを侵略国家と考える人であっても、一般のロシア人を平和の敵と見做すべきではないと思う。これは何も、ロシアに対してだけではない。私を含めて、日本人には中国政府≒中国共産党(中共)に対して強い警戒感と拒絶反応を有する人々が多い。しかし、中国政府がウイグルやチベットで、民族浄化にも等しい激しい人権弾圧を行っていたり、台湾に対して、武力併合の恫喝を行っているからと言って、中共党員や対日スパイでもない、一般の中国人を敵視することは正しくないと思う。警戒し防衛すべきは、中共政府や人民解放軍に対してであって、ごく普通の人々ではない。日本にも、ロシアにも、中国にも、どこの国にも、善人もいれば悪人もいる。何人であっても悪人とは関わりたくないが、何人であっても善人と知り合うことは、しばしば楽しい経験である。私たちは、人を人種や民族、国籍などの属性で偏り見るのでは無く、その人の人間性と言動で見極めることが必要だと思う。
「悪を行うすべての人には、ユダヤ人をはじめギリシヤ人にも、患難と苦悩とが与えられ、 善を行うすべての人には、ユダヤ人をはじめギリシヤ人にも、光栄とほまれと平安とが与えられる」(ローマ人への手紙 2:9−10 口語訳)