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値上げの季節(記事No.152)

 4月1日から、食品をはじめ多くの物品やサービスが値上げされた。NHKの報道などによれば、食品だけでも5,100以上の品目が値上げとなるそうである。その他、宅配便などサービス料金の改定もあり、値上げの総計は1万数千品目に及ぶようである。大企業などでは、次々ベースアップに踏み切っているが、中小・零細企業ではその余力が無いところも多く、生活がますます苦しくなる人々が少なくないであろう。このような状況においても、自公政権が頑なに減税を拒否しているのは、彼らがどちらを向いて政治を行なっているかがよく分かる現象ではある。私自身は、現時点で特定の支持政党は無いが、統一地方選挙でも、消費税減税を公約に掲げる候補者に1票を投じる積もりである。

 現在進行中の物価上昇の主要な原因として、マスコミの多くは、ウクライナ戦争により資源価格が値上がりしていることや円安を挙げている。その他、物流コストの上昇も指摘されている。例えば、食料はカロリーベースで約62パーセントが輸入であり、国際価格の上昇があれば小売価格に跳ね返るのは当然である。円安もまた、価格上昇に拍車をかけている。だが、円安は自然現象では無く、第2次安倍政権以来政策的に実現されて来たものである。長年、食料自給率の改善に取り組んで来なかったことと併せ、現在の物価上昇は自公政権の政策の当然の帰結であり、ウクライナ戦争はトリガーに過ぎなかったと思う。国民ではなくグローバリスト集団の側を向く政府を持つと、こうなるのだ。故安倍晋三氏の言葉を借りれば、「悪夢の」自公政権であろう。値上げの季節は、まだ始まったばかりだと思う。

 それでは、一国民として、どうすればこの状況を乗り越えることが出来るのか?節約術や投資術などは情報が世に溢れているが、前者は決定打とはなり得ないであろうし、後者は失敗のリスクもある。「稼ぐに追いつく貧乏なし」との諺もあるが、現代日本では、多少稼ぎを増やせたとしても、税金や社会保険料の伸び率は、大抵の場合所得の増加率を上回る。可能であれば、家庭菜園で無農薬・有機肥料で野菜などを栽培した方が良いが、都市部の住宅事情では困難な場合も多い。井戸水や湧水の利用も、同様の制約がある。そこで、私がお勧めしたいのは、世界のどこででも通用する能力や技能を習得することである。外国語の習得はもちろん有用であるが、それだけでなく、いわゆる手に職を付けるようなことが重要であろう。かつて、ソ連により約58万人の日本軍兵士らがシベリヤに抑留された時、理容や大工仕事の技能を持つ者たち、ロシア語が話せる者たちなどは、比較的良好な待遇を受けたと聞く。「芸は身を助く」という諺の通りである。
 
 今後、現在のインフレが激化し、いずれハイパーインフレになるやも知れないが、そうなると、現金の価値は大きく低下する。現物資産の場合も、それ自体で腹を満たせる訳ではない。金などは、世界共通の価値ある現物資産であるので、保有しているに越したことはないが、可搬性の無い不動産や趣味性の高い家財などは有事の備えとしては弱い。何世紀にも渡り、いつ流浪の民となるかも知れない中で生き抜いて来たユダヤ人や、母国を離れて世界各地に渡った華僑たちが、いずれも子供たちに高い教育を受けさせようと努めて来たことを見習うべきであろう。仮に戦争や迫害などで全財産を失ってしまったとしても、自身が身に付けた知識、能力、技能は、その人が生きている限り、世界のどこででも有用だからである。

「金もあり、珠玉も多い。しかし、貴いものは知識ある唇」(箴言 20:15 新共同訳)


 諸物価値上げの折、自己研鑽に多くの費用を充てるのは厳しいかも知れないが、今は多くの領域でインターネットを活用して、無料あるいは比較的低廉な価格で学習することも可能である。まずは、自分が特に関心のある分野から、能力や技能を一層磨くべく取り組むことが良いと思う。ニッチな分野ほど希少価値があるので、こんなこと学習して何になるのかという考え方は持たない方が賢明であろう。学んだ事がすぐに仕事や収入に結び付かなくとも、いざとなったら活用できる能力や技能を高めておくことは悪くない。それは、自分自身に備わった貴重な財産ともなるからである。