TRANSLATE

GlobalNavi

AD | all

もう一つの日本汚染(記事No.126)

 アメリカのペロシ下院議長が台湾を訪問したことに反発した中国は、案の定、台湾周辺海域などで、実弾演習を含む軍事的威圧行動に出た。中国が発射した弾道ミサイルの一部は、日本近海にも着弾した。沖縄タイムス電子版2022年8月6日付記事は、次のように伝えている。「ペロシ米下院議長の台湾訪問への対抗措置として、中国軍が台湾周辺で大規模な軍事演習を始めた影響で、沖縄県の与那国町漁協(嵩西茂則組合長、組合員105人)は5日、周辺海域への出漁自粛を決めた。島から60~80キロの距離に弾道ミサイルが相次いで落下し、危害が及ぶ恐れがあると判断した」

 これまでの日本政府による具体的対応は、8月4日に、森事務次官が駐日中国大使に電話で抗議し、軍事演習の即刻中止を求めたことである。日本領土から数十キロ先の、しかも、史上初めて、日本の排他的経済水域(EEZ)内に着弾したにも関わらず、外務次官が電話で抗議しただけである。数年前に北朝鮮が、弾道ミサイルを日本周辺海域に向け発射した時とは違い、あまりにも対応が及び腰ではないだろうか。2016年5月30日付ロイター通信電子版日本語記事は、以下のように伝えている。「中谷元防衛相は北朝鮮が弾道ミサイルを発射する兆候があるとして、自衛隊に対し迎撃態勢を取るよう命じる破壊措置命令を出した。政府関係者が30日、明らかにした。命令を受け、自衛隊は東京・市ヶ谷の防衛省敷地内に地対空ミサイル『PAC3』を展開した。北朝鮮は今年に入って弾道ミサイル発射や核実験を行うなど、挑発行為を繰り返していたが、36年ぶりの労働党大会が終了した今月上旬以降は沈静化していた。日本政府は11日に破壊措置命令を解除していた」

 また、2017年8月29日と9月15日に北朝鮮が、大気圏外にせよ日本上空を通過し太平洋に着弾するミサイルを発射した際には、日本政府は、いずれも全国瞬時警報システム「Jアラート」を発令させ、関東以北の東日本に警報が伝達された。早朝にスマホや携帯の緊急速報や、防災無線の「ミサイル発射〜頑丈な建物や地下に避難してください。」との放送に、驚きや恐怖を感じた人も少なくなかったと思う。内閣官房国民保護ポータルサイトによれば、Jアラートが発令基準は次のとおりである。「全国瞬時警報システム(Jアラート)は、弾道ミサイルが日本の領土・領海に落下する可能性又は領土・領海を通過する可能性がある場合に使用します。逆に、日本の領土・領海に落下する可能性又は領土・領海を通過する可能性がないと判断した場合は、Jアラートは使用しません。なお、領海外の日本の周辺海域(排他的経済水域(EEZ)等)にミサイルが落下する可能性がある場合は、Jアラートは使用しませんが、船舶、航空機に対して迅速に警報を発します」

 このように、過去の北朝鮮による弾道ミサイル発射の際には、日本政府は自衛隊に迎撃命令を出したり、国民に向けてJアラートを発令したりと、実効性に乏しいパフォーマンスとは言え、一応警戒する素振りは見せていた。今回は、海上保安庁が船舶向けの航行警報は出したものの、表向きは政府として特別な警戒行動には出ていない。2017年の場合は、同年10月22日投票の総選挙を控えていた故の、安倍政権(当時)の国民向けパフォーマンスではなかったのかと思える。ちなみに、その時の選挙結果は、与党圧勝であった。今回の中国による、台湾及び日本周辺海域へのミサイル発射への日本政府の対応は、過去の事例と比べても危機感に乏しい対応である。それだけでなく、ロシアによるウクライナ侵攻を受けての、制裁行動と比べても、中国への対応は、あまりにも控え目な内容である。

 なぜ、そうなるのか?私の見立てでは、理由は2つある。1つは、日本経済の中国依存度が高いため、制裁の応酬になれば、傷が深くなるのは日本の方だからである。ちょうど、対ロシア制裁でより大きな打撃を受けているのは、対象国のロシアではなく、西ヨーロッパ諸国の方であるのと同じである。もう1つは、日本の与党政治家や官僚の中に、中国と特別な関係を有している者たちがいるからである。よく言われていたことは、旧民主党系や社民党の政治家の中には、中国と親密な者たちが多いと言うことであった。しかし、現在では、野党系よりも与党の方に、中国と近い政治家が多いと思われる。ここで言う特別な関係や、親密の意味とは、しばしばマネートラップやハニートラップにかかったことと、ほぼ同義である。例えば、20数年前に発覚した事案であるが、故橋本龍太郎首相は長い間、中国人女性通訳と親密な関係にあった。彼女は、北京市公安局の情報員であったことが後に判明しているが、恐らくは、対外情報活動を担当する、中国共産党中央統一戦線工作部の要員でもあったと思われる。一国の首相にまでなった人物でさえも籠絡されたわけであるから、他は推して知るべしであろう。

 中国の、日本を含む西側諸国への浸透工作は、マネトラ、ハニトラだけではない。教育や文化活動を装った工作もある。有名なところでは、「孔子学院」がある。読売新聞電子版2021年5月31日付記事は、次のように伝えている。「政府は、中国政府が出資し、日本国内の大学に開設している『孔子学院』の透明性確保に乗り出す。孔子学院を巡っては、中国の対外世論工作を担っているとの懸念があり、政府は各大学に情報公開を促し、動向を注視する考えだ。孔子学院は、中国政府が中国語や中国文化の普及を目的に2004年から世界各国に開設し始めた。19年末時点で世界162の国・地域の550か所に上るとされる。日本では、立命館大や早大など14の私立大に設置されている。」人によっては、これは単なる文化普及活動の一環であると思うかも知れない。だが、この読売新聞記事の続きにはこうある。「日本政府が対応を強化するのは、欧米諸国が孔子学院を中国のプロパガンダ機関とみなし、規制を厳しくしていることが背景にある。米国では、議会上院の国土安全保障・政府問題委員会が19年2月、『孔子学院の教員は中国の国益を擁護するよう誓約している』などと指摘する報告書をまとめた。トランプ前政権は昨年8月、米国内の本部機能を持つ『孔子学院米国センター』(ワシントン)に対し、大使館などと同様に、所有資産などの報告を義務付けると発表した。全米学者協会によると、米国内の孔子学院は昨年8月の67か所から、今月18日時点で47か所に減った。カナダ、フランス、ドイツなどでも閉鎖が相次いでいる」

 現在日本では、安倍元首相暗殺を機に、統一教会(現・世界平和統一家庭連合)による政界への浸透に注目が集まっている。統一教会は、反日的な教義を有する(似非)宗教団体であるが、つながりを持つ政治家の多くは自民党に所属している。自称保守の政治家たちが、実は反日的組織と親密であったと言う皮肉である。中国共産党(中共)もまた、反日組織と見做して良いだろうが、これまた、彼らと関係が深い日本の政治家の多くは、いわゆる保守系である。旧社会党系の流れを汲む政治家が、中国や北朝鮮と親密だったのは公知の事実であるが、自民党や公明党の中にも、同様の政治家たちが少なくなかったのだ。都道府県知事の中にも、中国企業に便宜をはかったとの疑念を持たれている者たちがいる。これはもう、中共により日本が汚染されていると言うレベルであろう。中国が、台湾を軍事侵略する構えを見せている現在、日本の政府や公党に獅子身中の虫たちがいるようなていらくで、果たして国を守れるのだろうか?宮潔めならぬ、政府潔め、政界潔めの必要性を切実に感じる。手遅れにならないうちに、日本に神の介入があれば良いのだが。
「それから、彼らはエルサレムにきた。イエスは宮に入り、宮の庭で売り買いしていた人々を追い出しはじめ、両替人の台や、はとを売る者の腰掛をくつがえし、また器ものを持って宮の庭を通り抜けるのをお許しにならなかった」(マルコによる福音書  11:15-16. 口語訳)